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心を抉る残酷さに 10

Penulis: 花室 芽苳
last update Terakhir Diperbarui: 2025-10-18 23:49:10

「落ち着いてください、東雲《しののめ》さん。雨宮《あまみや》君はそういう社員ではありません、ですのできちんと話をしましょう?」

 詰め寄ってくる東雲社長を部長が止めようとしてくれるが、話を聞いてくれる状態ではなさそうで。流石に怒らせ過ぎてしまったかもしれないが、間違ったことは言ってないはずだ。

「いいや! 彼女がこのような態度をとるのなら、私達もそれなりの対応をさせて頂こう。この会社との付き合い方も考え直さなければ」

「な、東雲社長! ちょっと待ってください、それはいくら何でも……」

 その言葉に私もハッとする。いくら何でもこの会社にまで迷惑をかける訳にはいかない。この職場の人たちに自分の所為で何かあるなんてそんなの……絶対にダメだ!

 そう思うと身体が勝手に動いて、今度は自ら社長の前に立った。

「私に何を望まれてるんですか、東雲社長?」

「そうだな。君が自ら会社を去るか、それとも……まあ何が一番ベストなのかを、自分で考えればいい」

 なるほど、つまり社長は私に自己都合で会社を辞めろと言いたいのだろう。そうしなければ都合が悪い理由が、東雲社長にはあるのだと思われる。

 どんな繋がりなのかは分からないが、その裏には鵜野宮《うのみや》さんの存在を感じて。こんな事をしていったい何の意味があるのだろう?

 そもそも朝陽《あさひ》さんの心は、最初から鵜野宮さんに向いている筈なのに。

 なのに、どうしてここまで?

「私がこの会社を辞めれば、問題ないという事ですよね? 東雲社長が、それを守って頂けるのなら……」

「ちょっと待ちなさい、雨宮君。とりあえず、二人とも落ち着いて話をするべきだろう!」

 間に入って部長はそう言ってくれるが、東雲社長は私の「辞める」という言葉を聞いて一瞬で表情を変えた。

 私はこの職場が大好きだから……自分の所為でこれ以上迷惑はかけられない。

 朝陽さんも出張でいないこの状況では、良い打開策も浮かばなくて。諦めそうになった時――

「ちょ、ちょっと勝手にはいられては困ります! いったい貴方は……」

「急ぎの用だ、後でいくらでも説明するから後にしてくれ」

 ……え? この声は、もしかして?

 そんなはずはない、彼は今愛知に出張中のはずで帰ってくるのは早くても明日だと言っていたのに。でも私が朝陽さんの声を聞き間違える訳が無くて、一気に胸が熱くなっていく。

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